ひと口に酒造りといっても、造る側には我々の想像を超えた数多くの苦労があります。このコーナーは、酒造りのプロフェッショナルのみなさんへのミニ・インタビューです。 |
第1回:平和酒造(和歌山県) Q:日本酒について、どのようにとらえておられますか。また、目指すところ、モットーなどありましたらお聞かせください。 A:家業を継いで17年。「良い酒」とはどんな酒なんだろうと、最近考えています。一方、酒自体は水の如く、主張も弱いものの、料理を補完した時に、俄然、互いにその味を高め合える「良い酒」。 漸く満足に近い酒が出来たと思い、友人宅で食事をしながら数杯を重ねてみて、酒と料理との相性の難しさを考えさせられることが、よくあるものです。 従来、品質的評価を追求する余り、酒として完結を目指しすぎた面はないか、造り手の独善に陥っていなかったかを、反省しています。 価格的に手頃で、たくさん飲んでも飲み飽きしない、軽い調子の「良い酒」にも挑戦してみたいと考える、今日この頃です。 と、万葉の歌人・山部赤人に詠まれた「和歌鶴」。この名勝の地をのぞみ、霊峰高野に源を発する清流・貴志川に沿った野上の庄に、私共の蔵があります。 かつて放映された「夏子の酒」に映し出される、零細で小さな蔵。老齢化に怯えながら、蔵人さんたちが毎年、必死の思いで良い酒を造ろうと頑張っている。私共の蔵の実体そのものを良く表してくれています。 まず蔵人さんたちが目標にするのが、東京の「全国新酒鑑評会」。名もない、地方の酒蔵にとって、自己の腕を磨き高めていく絶好の機会。一方で、酒を愛する人々とのふれあいを得るチャンスと考えています。 「まろやかなうまみと、馥郁(ふくいく)たる香り」。これを私共の蔵の酒のモットーとしています。 |