おお、本編の最初はわしか。ここからはもう背景画像はサービスせんぞ。ではよろしいかな? わしが生まれたのは天文初期のころじゃった。殿下とは三つ違いじゃ。ん? 殿下って誰かじゃと? 三つ年上か年下かじゃと? それは自分で考えなされ。ここはもう入門編ではないでな。 わしの親父殿はすごい人でのう。初めは片田舎の小さな領主じゃったが、あっという間に近隣を切り従えてのう。もちろん勝ってばかりではないぞ。巷では「七騎落ち」と称する敗戦行も経験なされたし、何より北と西に大敵が控えておってなあ。両方とも滅ぼしたのは運もあったにせよ、やはり親父殿の実力じゃろう。 わしは長男ではなかったので、養子に出されたのじゃが、それが少し珍しい形でのう。数年のうちに二家をともに相続してな、わしの代でその家を一つにまとめたんじゃ。 それとな、わしは海に縁があってのう。親父殿から一方の指揮権を預けられたんじゃが、その期待に応えられたのも「海」によるものが大きいのう。 あれは嵐の夜じゃった。親父殿が謀略で敵方をあるところにおびき寄せてのう。ただそこまでは良かったんじゃが、問題は軍勢の数。敵に比べてこっちの兵数、特に船が少なすぎての。わしも事前に必死でさる水軍衆に協力を求めて頼んだものじゃが、敵も同じ相手に頼んでおったようでの。もう破れかぶれで「一日だけ船を貸してくれ」とハッタリかましてやったんじゃが、それが見事に成功しての。何とか船を回してもらって勝つことができたんじゃが、今思うとほんとに紙一重の所じゃったな。ま、戦なんてものはたいがいそういうものじゃが。 それと、後のことじゃが、すわや一家を挙げての総力戦か、というところで難しいことが起きての。わしは陣中で兄者と激論を交わしたのじゃが、兄者がぐっとこらえてわしに協力してくれたお陰で、とりあえずは収まったのう。あのまま攻め込んでおったら、勝ちはしても、また戦の絶えない世に逆戻りしておったやもしれぬ。それにしても、この時腹を切らせてしもうたかの者には不憫なことをした・・・。坊主めが独断で事を運んだようでの。今となってはもうどうでも良いことじゃが・・・。ただ兄者は逸物での、後に西方の陣中で亡くなったのじゃが、あの時はさすがのわしもショックでな。文武両道とはまさに兄者のためにあるような言葉じゃわい。 あと、晩年には権力によってあわや主家を乗っ取られそうになったことがあっての。わしは自分の家を犠牲にして養子縁組を進んで承諾したんじゃよ。でないと主家が危なかったんでな。案の定、この養子がまた愚者でのう。程なく起こった戦で裏切り者の烙印を押されてな、やがては狂い死にしてしもうたわい。ま、その時にはすでにわしは世を去っておったがな。もしわしが生きておれば、少なくともあのような結末にはならんかったじゃろう。殿下には「蓋」にされてしもうたがの、うわっはっは。 おや? もう終わりじゃと? わしの本拠ものう、最近では近くに巨大な橋も架けられとるので、ぜひ一度おいでなされ。では、さらばじゃ。 |
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