奇才・前田慶次の詠んだ歌
〜『前田慶次道中日記』より〜

これは戦国期の傾奇者として知られる前田慶次が、慶長六年に上杉景勝の後を追って京都から米沢へ至るまでの道中の様子を書き留めた『前田慶次道中日記』の中に見られるもので、猛将・豪傑としても名高い慶次の風流な一面をご紹介します。横書きご容赦下さい。


誰ひとりうき世の旅をのかるへき のほれは下る大坂關
 
けふまてはおなしき路をこまにしき 立別れけるそなこりををかる
 
冬まても をくてはからぬ 稲葉哉
 
けはひたる妻戸の妻のかほの上に ぬりかさぬらしへに坂の山
 
さむさには 下はらおこす 野尻哉
 
行末の道をなら井の宿ならは 日高くとても枕ゆふへく
 
すみの山の ひかしなるらし富士の雪
 
北は黄に南は青くひかし白 西紅井に染色の山
 
こほらぬは 神やわたりし すはの海
 
あなたふと涙ことはの神邊 心の外はことの葉もなし
 
向東去北行路難 途隔古郷涙不乾 我夢朋友高枕上 破窓一宿短衣寒
 
氷る夜やかたはらさひしかり枕 山河の雪にのこしおく人
 
つかねても 重き眞柴は 負かへて
 
大たはら米はあれとも其ままに 煮てやかまましなへかけのまち
 
ひたるさよさむきよめしの火をたきて あたりあたりもなへかけのまち
 
雪霜に めくりは流る あしの哉
 
白川の關路はこしつ旅衣 猶行末も人やすむらん
 
とはゝ人いはせのなみのぬれぬれて わたる宿つけよ夢のうきはし
 
あつさ弓 いたやこしする かりは哉
 
にんにくの にうわのすかた 引かへて
 


TOP