さて、家康は実際どのようにして、いつ三河へ戻ったか。明確な答はない。みなさんそれぞれが自分なりに納得できるストーリーを頭に描いて楽しんでいただけたら、それで良いのではないかと思う。 家康は堺で変報に接して大急ぎで帰還したかもしれない。この稿で書いた津田や尊延寺を経由せず、相楽郡山田村を抜けて草内へと向かったかもしれない(『徳川実記巻三』にはこうある)。 一揆に襲われた際に、凄腕の忍者集団が忍術を駆使してこれを全滅させたかもしれないし、本多忠勝や渡辺半蔵が自慢の槍を揮って縦横無尽の活躍をしたのかもしれない。この一連の稿をとりあえずベースに、そういう思いを脳裏に馳せて「神君伊賀越え」を、また「戦国の歴史」を思い思いにお楽しみいただけたら、制作者冥利に尽きるというものである。 正にそれこそが、「戦国浪漫」。 今回の取材は3回に分けて行ったのだが、最終取材時に伊賀市予野の千賀地館跡付近で蜂に刺されるというアクシデントに遭った。史跡巡りをされる方、とくに草深い地へ足を踏み入れる際には、蜂や蛇などのトラブルには十分用心されるようお勧めする。 最後に、お忙しい中、快くご協力いただいた宇治田原町教育委員会の皆様、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。 ★この稿の主な参考文献★ ※「宇治田原町史 第1巻」(宇治田原町史編纂委員会) ※「宇治田原町史 参考資料第二輯」(宇治田原町史編纂委員会) ※「甲賀郡志 下巻」(甲賀郡教育会) ※「上野市史」(上野市史編纂委員会 上野市役所 [現伊賀市]) ※「伊賀町史」(伊賀町役場総務課町史編纂室 伊賀町役場 [現伊賀市]) ※「栗東歴史民俗博物館紀要 第3号」(栗東歴史民俗博物館) ※「正校 伊乱記」(百地織之助編 摘翠書院) ※「大日本地誌大系 近江輿地志略」(雄山閣) ※「日本庶民生活史料集成」(三一書房) ※「国史大系 徳川実記 第一篇」(吉川弘文館) ※「続史料大成19 家忠日記 一」(臨川書店) ※「新訂 寛政重修諸家譜」(続群書類従完成会) ※「日本城郭大系」(新人物往来社) ※「日本歴史地名大系 (23〜26)」(平凡社) ※「織田信長家臣人名辞典」(吉川弘文館) ※「地方別 日本の名族 八 近畿編」(新人物往来社) ※「多羅尾の歴史物語」(杉原信一著 多羅尾郷土史研究会) ※「日本の歴史12 天下一統」(林屋辰三郎著 中央公論社) ※「日本の戦史3 中国・山崎・賤ヶ岳の役」(桑田忠親・山岡荘八監修 徳間書店) ※「戦国風雲 忍びの里」(新人物往来社) ※「忍者と忍術」(戸部新十郎著 毎日新聞社) ※「忍者の生活」(山口正之著 雄山閣) ※「忍術 その歴史と忍者」(奥瀬平七郎著 新人物往来社) ※「伊賀流忍術秘伝の書 煙りの末」(黒井宏光著 上野市観光協会 [現伊賀市]) Camera: Nikon F4S 28-70mm F3.8/80-200mm F2.8/MICRO105mm F2.8, Film: V100 Scanner: SHARP JX-250 |