島津日新斎「いろは歌四十七首」
その2(ゐ〜す)

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いろは歌・ゐ [ゐ]
亥にふして
寅には起くと
ゆふ露の
身をいたづらに
あらせじがため
いろは歌・の [の]
遁るまじ
所をかねて
思ひきれ
時に到りて
涼しかるべし
いろは歌・お [お]
思ほへず
違ふものなり
身の上の
欲をはなれて
義をまもれひと
いろは歌・く [く]
苦しくも
すぐ道を行け
九曲折の
末は鞍馬の
さかさまの世ぞ
いろは歌・や [や]
やはらぐと
怒るをいはば
弓と筆
鳥にふたつの
つばさとを知れ
いろは歌・ま [ま]
万能も
一心とあり
事ふるに
身ばし頼むな
思案堪忍
いろは歌・け [け]
賢不肖
もちひ捨つると
言ふ人も
必ずならば
殊勝なるべし
いろは歌・ふ [ふ]
無勢とて
敵をあなどる
ことなかれ
多勢を見ても
恐るべからず
いろは歌・こ [こ]
心こそ
軍する身の
命なれ
そろゆれば生き
揃はねば死す
いろは歌・え [え]
回向には
我と人とを
隔つなよ
看経はよし
してもせずとも
いろは歌・て [て]
敵となる
人こそはわが
師匠ぞと
おもひかへして
身をもたしなめ
いろは歌・あ [あ]
あきらけき
目も呉竹の
この世より
迷はばいかに
後のやみぢは
いろは歌・さ [さ]
酒も水
流れも酒と
なるぞかし
ただ情けあれ
君がことの葉
いろは歌・き [き]
聞くことも
又見ることも
心がら
皆まよひなり
みな悟りなり
いろは歌・ゆ [ゆ]
弓を得て
失ふことも
大将の
心一つの
手をばはなれず
いろは歌・め [め]
めぐりては
我身にこそは
事へけれ
先祖のまつり
忠孝の道
いろは歌・み [み]
道にただ
身をば捨てむと
思ひとれ
かならず天の
たすけあるべし
いろは歌・し [し]
舌だにも
歯のこはきをば
知るものを
人は心の
なからましやは
いろは歌・ゑ [ゑ]
酔へる世を
さましもやらで
さかづきに
無明の酒を
かさぬるは憂し
いろは歌・ひ [ひ]
ひとり身を
あわれと思へ
物ごとに
民にはゆるす
こころあるべし
いろは歌・も [も]
もろもろの
国や所の
政道は
人に先づよく
教へ習はせ
いろは歌・せ [せ]
善に移り
過れるをば
改めよ
義不義は生れ
つかぬものなり
いろは歌・す [す]
少しきを
足れりとも知れ
満ちぬれば
月もほどなき
十六夜のそら
日新公の墓 参道奥にある
日新公の墓

参照

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